二晩続けてリトル・トーキョーに行きました。いつもはあまり行かないけれど、行きだすと不思議なもので、連日続くことになりました。今夕はホテル・ ニュー・オータニで行なわれた七夕祭参加が目的でした。こちらはまだ7月6日ですが、明日は大きな会議が予定されているとのことで、今年だけは一日早めて の七夕祭でした。
妻に「用心してよ」と注意されながら、私も浴衣姿に足には下駄と言う格好で家を出ました。下駄の歯がブレーキに引っかからないように注意しなが らフリーウェイを走りました。安全のためには靴の方が良いのでしょうが、浴衣に靴では様になりません。ここはすっきり裸足に下駄がベストです。
ホテルの二階に空中庭園があり、池や滝や築山が日本情緒をかもし出しています。そこに舞台を作り、恒例の着物のファッション・ショーが行なわれましたが、それを担当したのが私が会長を努めるLA着物クラブでした。
自分では袴の紐や帯もちゃんと結べない私などは会長になどなる資格はないのですが、ある理由で、昨年、今年と会長を努めています。その理由はま た別の機会にお話しましょう。現在60名ほどの着物好き人間達が会員になっています。年間を通じて色んなプログラムを行なっています。
会の目的は着物を着る喜びや楽しさを日本人、アメリカ人を問わず、広めて行こうとするものです。3分の1位はアメリカ人の会員です。外人さんの 着物姿はともすると様にならない人が多いのですが、さすがにLA着物クラブの皆さんは日本人にも負けない素晴らしさです。わざわざ日本に行って着物を作っ た女性などもいます。着物以外にも茶道や華道、琴や尺八などを勉強している人もいます。
今夕の英語の司会をして呉れたのはエイミー・スタインバーガーさんと言う、まだ二十台後半の女性でした。サウスカロライナ州出身の彼女は日本の アニメに憧れてロサンゼルスに来ました。こちらの芸術大学で専門にイラストなどを学びました。ディズニーや大学からも奨学資金を貰った優秀なイラストレー ターです。現在は出版関係の会社で働いています。
彼女は私よりも背が高い女性ですが、浴衣の着付けもばっちりでした。濃い藍色地に白い花の模様が浮かび、赤い帯が、彼女の金髪と白い肌にとても調和していました。日本人の着付けの専門の先生の日本語の説明を上手に英語で通訳していました。
日本でもしばらく生活した事があり、日本の着物について、生活習慣について、可愛いイラストに英語での説明を付け、日本を知らないアメリカ人に判りやすく説明しています。近くそれらを纏めた絵本がアメリカの出版社から発刊される予定だそうです。
ファッションショーの観衆も半分以上はアメリカ人でした。日本人の奥様と一緒に着物姿のまだ小さい女の子の手を引きながら、浴衣姿に木の下駄を カロコロ言わせながら歩いているアメリカ人男性がいました。彼も浴衣姿で、私が「どうですか、日本の浴衣は?」と聞くと、即座に「I love it. It’s so comfortable!」との返事が返って来ました。ショーが終った後、近くの屋上ビアガーデンで、右手には生ビールのジョッキ、左手には焼き鳥の串を 持つ彼の姿がありました。テーブルの上には枝豆も乗っていました。
まだまだ数的にはそんな多くないですが、日本文化の大切な一つとして、着物に興味を持ち、自分で着てみたり、歴史を勉強したりするアメリカ人も 着実に増えています。エイミー・スタインバーガーさんや枝豆の彼もそのような人たちの代表だと思いました。ところで全く話は変わりますが、「七夕」は比較 的新しい書き方で、本当は昔は「棚機」と書いたそうです。夕食の時に隣り合わせた83歳の日本人の老人に教えられました。
[鶴亀 彰]