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ハリウッドを目指す若者達

 今週もまたハリウッドのAmerican Film Instituteに行った。鹿児島弁コーチの仕事である。前回お伝えしたがイタリア系アメリカ人の監督が製作する日本をテーマにした映画に関与しての仕事である。妻も興味があるらしく、今週も一緒に付いて来た。高台にあるせいで、ハリウッドの夜景が綺麗に見え、空には半月が浮かんでいた。

 来週から撮影が始まるとあって関係者全員が集っての全体ミーティングである。出演者の他にメーキャップや衣装や大道具・小道具や照明など裏方さんも参加している。出演者は全員が日本の若者である。エキストラ役なども含め、25人の若者がいた。男性21人、女性4人である。

 一体彼等はどこにいたのかと思うほど、ただ一人を除いて、全員私が知らない顔である。昔話になるが、私の渡米した1966年から70年代、80年代に掛けては日本人が集れば、それは駐在員や留学生などで何度か顔を合わせた同士がほとんどだった。

 しかし最近では90日のビザなし訪問も可能とあって、極めて気軽に若者達はロサンゼルスを訪れ、自分の夢の実現に挑戦している。ここに集った若者達はハリウッドの映画界でのチャンスを求めている人々のようである。真剣に自分の台詞を練習し、認められようと努力していた。

 だが壁は厚く、大きい。まずビザの問題があり、正式に仕事するには正式な労働ビザを確保する必要がある。また生活費の問題もある。言葉の問題もある。夢破れて帰国する若者も少なくない。ここにいる内の何人がその壁を越えられるだろうか?

 驚いた事は最近の日本の若者の英語力である。監督とほぼ不自由なく、英語で語り合っている。私の時代と違い、確かに今の若者のコミュニケーション能力は上達している。是非これらの挑戦する若者の中から一人でも二人でもハリウッドの壁を越えて欲しいと望んでいる。

 映画産業の隆盛は一国の経済や文化にとって、ある時は外交にとって、極めて重要な事である。これらの若者がビザや生活費や言葉の問題を自分ひとりで苦闘するのもそれなりに意義はあると思うが、国の政策の一つとして日本で世界的に通用する役者を生み出すために、まず基本的な訓練を日本で施す仕組みがあっても良いと思われる。昔明治政府が外国人雇われ教師を活用したように、ハリウッドの人材を教師として招請して語学力や演技力を指導出来ないものだろうか。この点においては韓国などの国を挙げての支援策が功を奏している実例がある。皆の熱演が続く中で、私はそんな事を考えながら、若者達の顔を眺めていた。(終わり)

[鶴亀 彰]

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